水酛
みずもと
水酛(みずもと)は、日本酒の醸造において特に古い手法の一つで、主に江戸時代に発展した酒母(しゅぼ)造りの方法です。この手法では、飯米を水に浸し、その水を使って乳酸菌を繁殖させることにより乳酸を生成します。この生成された乳酸を利用して酒母を育成し、醸造プロセスに活用します。
水酛の技術は、温暖な季節に適しており、酸味のある風味を持つ日本酒を作り出すために重宝されました。そのルーツは室町時代の文献「御酒之日記」に記載される菩提泉(菩提酛)にさかのぼり、基本的な効用や使用目的、醸造法は菩提酛と共通しています。水酛による酒母は、より安定した発酵が可能であり、日本酒の香りや味わいに深みを与える重要な役割を果たしています。
関連用語
-
酵母
酵母とは、アルコール発酵に欠かせない単細胞の微生物であり、主に糖分を分解してアルコールと二酸化炭...
-
手造り
手造りとは、伝統的な方法で日本酒を製造する際のスタイルを指します。この製法では、甑(こしき)や麹...
-
酒母
酒母(さかも)は、日本酒を醸造する際に使用される重要な材料で、優れた酵母を大量に培養したものを指...
-
純米酒
純米酒は、白米、米麹、水を原料として醸造された清酒の一種です。精米歩合は70%以下で、米と米麹のみ...
-
生もと
生もと(なまもと)は、伝統的な方法で酒母を作る技法のひとつです。この製法では、麹(こうじ)、蒸米...
-
発酵
発酵とは、微生物が基質を分解し、エネルギーを得る過程のことを指します。日本酒の製造においては、主...
-
地
「地」という用語は、日本酒の醪(もろみ)の発酵プロセスにおける特定の状態を指します。この状態は、...
-
吟醸造り
吟醸造りとは、特別に選ばれた精米歩合の高い白米を使用し、低温でゆっくりと発酵させる日本酒の醸造方...
-
粕四段
粕四段とは、清酒の醪(もろみ)に対して、醪の添、仲、留という三段階の仕込みが終了した後に、清酒粕...
-
転下糖
転下糖とは、特定の酵素や酸によって蔗糖が加水分解されることで生成されるブドウ糖と果糖の混合物を指...
菩提酛は、生酛系酒母の一つで、奈良県の菩提山正暦寺で14世紀頃に生まれた日本酒の醸造方法です。この技法は、特に夏場においても安全に酒母を造るためのものです。菩提酛は「水酛」とも呼ばれ、白米を水に浸し、その中に炊いたご飯を埋め込むことで生成される乳酸を活用します。この乳酸には、雑菌の繁殖を抑える効果があり、温度の高い季節でも安心して酒造りが行えるのが特徴です。 菩提酛の手法は、奈良時代に有名な銘酒「菩提泉」としても名を馳せており、多くの文献において1440年代にこの酒が造られたことが記録されています...
詳細を見る乳酸菌とは、炭水化物を分解して乳酸を生成する細菌の総称です。日本酒の醸造過程、特に生酛系酒母(きもとけいしゅぼ)を作る際に重要な役割を果たします。生酛は、自然の環境下で乳酸菌を培養することで、酒母を酸性の状態に保ち、雑菌の繁殖を防ぎます。これにより、酵母がしっかりと育ちやすい環境が整います。ただし、乳酸菌の中には、酒を劣化させる「火落ち菌」と呼ばれる悪玉菌も存在します。このため、酒造りの最終段階で火入れ(加熱処理)を行い、これらの雑菌を殺菌することが重要です。このように、乳酸菌は日本酒の品質...
詳細を見る酒母(さかも)は、日本酒を醸造する際に使用される重要な材料で、優れた酵母を大量に培養したものを指します。これは、醪(もろみ)を仕込む前の段階で作られ、醸造の品質や発酵の安定性を確保するために極めて重要です。酒母には、速醸系酒母と生酛系酒母の2種類があります。速醸系酒母は、短期間で酵母を培養できるため、醸造工程が比較的スピーディに進むのが特徴です。一方、生酛系酒母は、自然な酵母の活動を利用して時間をかけて培養され、より複雑で深みのある風味をもたらすことができます。酒母の選び方や培養方法は、最終的...
詳細を見る発酵とは、微生物が基質を分解し、エネルギーを得る過程のことを指します。日本酒の製造においては、主に酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に変換することで、酒を醸造します。発酵は、呼吸と異なり、基質が完全に酸化されることはなく、その過程でアルコールや有機酸などの有用な物質が生成されるのが特徴です。これにより、酒独特の風味や香りが生まれ、風味豊かな日本酒ができあがります。発酵は、酒造りにおいて非常に重要な工程であり、温度や時間、酵母の種類などによってその結果が大きく変わります。
詳細を見る乳酸は、日本酒の醸造過程において非常に重要な役割を果たす有機酸です。特に、酒母(もと)の製造において、酵母の純粋かつ大量な培養を促進するために重要です。 酒母は、発酵の基盤となる部分で、ここでの乳酸の生成は特に重要です。生酛系(きもとけい)酒母では、自然界に存在する乳酸菌を取り込み、その働きによって乳酸が生成されます。一方で、速醸系(そくじょうけい)酒母では、あらかじめ醸造用の乳酸を添加することにより、短期間での酒母の立ち上げを実現します。 乳酸は、醪(もろみ)の初期段階で汚染の危険が高い時...
詳細を見る酛(もと)とは、日本酒の造りにおいて非常に重要な要素であり、醪(もろみ)を仕込む前に優れた酵母を大量に培養したものを指します。酛は酒母とも呼ばれ、この工程を酛造りまたは酒母造りといいます。酛の作り方にはさまざまな手法があり、主に速醸酛と生酛に大別されます。 速醸酛は、乳酸を添加することで酵母を育てる手法で、短期間で酒造りを行うことができるため、効率的な醸造が可能です。一方、生酛は、自然に存在する乳酸菌を利用する方法で、伝統的な技術が用いられます。また、山廃酛や菩提酛など、さらに多様な手法もあ...
詳細を見る